最期
人が亡くなると、お通夜やお葬式
告別式とはなんぞや?
よくわからない儀式。
最期に顔を見てやってください。
ドラマや映画にでもあろう台詞。
10年程前に友人が亡くなった。
彼女は乳癌だった。
私は癌になった経緯があり
周りの友人に癌検診を勧めていた。
彼女は私の話を真剣に受け止めてくれ、検査を受けた。
そして乳癌が見つかったのだ。
しかし、もう遅かった。
彼女は4人の子持ち。一番下の子はまだ小学校にあがっていなかった。
いつも笑顔を見せてくれていたが、心の中はどれだけ辛かっただろう。
抗がん剤の副作用で髪が抜け落ち、ウイッグをつけて
「いいだろ?こんな髪型も」
なんて笑っていた。彼女は男っぽい話し方をする人だった。
入院して一年ちょっと。誰もが彼女の死を予想していなかった。ご主人は知っていたのだろう。とでも大柄で、ガッチリした体格のご主人で、しっかりしている。しかし、心情は計り知れない…
彼女が亡くなり、他の友人二人とお葬式に行った。そのうちの一人の友人が
「お顔を見せてもらおう」
と言った。
私は気がすすまなかった。
自分だったら、死んでしまった自分の顔を見て欲しいか?
親族が、言ってもいないのに催促するってどうなんだ?
そう思った。
ご家族の方、彼女のご主人だが、快くお顔を見せてくれた。
今にも起きそうないつもの友人の顔があった。
私は今、彼を喪い、光のないままに生きている。
一年と半年が経とうとしているが、まるで受け入れられず、信じられない。
それは…最期に会えなかったからだろうか。
会えていたら、何が変わったのだろうか。
「顔を見る」ということは、残された者が受け入れるためにも必要な事なのかもしれない。
先人達が、せめて、残された者が生きていきやすくするために行った事なのかもしれない。
私は、違う道を歩んでしまっているのかも知れない。
ちなみに、私の癌は完治している。
運が良かった。とでも言うのかな…今はそれが残念で仕方ない。