ある年配男性の話
書き残したい想いに駆られ、ある年配の男性について書こうと思う。
その年配の男性とは、仕事絡みで会った。
70代後半だったと思うが、長身で、スマートな印象のイケメン。若かったら、いや、若くなくてもモテるだろうな。と思った。
「 おじいさん 」や、「 ご老人 」と言う言葉が似合わない。
私が職場の人から、聞いた、彼に関する情報は
・一人暮らし
・身寄り無し
・持病を抱えている
・婚約者の女性を交通事故で喪った
その時は、仕事の話しくらいしか、その男性と話さなかった。
彼にも、「 こんな人がいるんだよ 」と、可愛そうに。という思いを込めて話した。
数ヶ月後、私の愛する彼が命を奪われた。
程なくして、その男性と会う機会があった。
その男性は老人施設に行くので、ご挨拶に来たようだ。
2人になった、短い時間。
私は、一人暮らしについて触れた。
「 結婚しなかったからねー」
私は、「 随分辛い思いをされたようですね……」と、その瞬間、何かが共鳴したような感覚だった。
その男性は色々話してくれた。
「 女友達と二人、車で旅行に出かけたんだよ。僕は、見送ってさ。その後、急に嫌な予感がしてさ、彼女を追いかけたんだよ。でも、間に合わなかった・・・その後も、縁談の話が無かったわけじゃないんだよ。でもね・・・いい娘だったからねぇ 」男性は泣いていた、
私も声を殺して泣いていた。男性は 「 参ったな〜泣かされちゃったよ。」そして「 今でも命日にはお墓参り行くんだよ 」と、照れ笑いしながら、泣いていた。私も泣きながら笑った。
彼の話は、するつもりも無かったが、まだ出来なかった。
口にする事も出来る状態では無かった。理由はわからないが、書き残したかった。
素敵な方だったな。