刑事裁判
彼が理不尽に命を奪われ、私は加害者へ手紙を書いた。どうしても彼のことを知って欲しかった。そして、罪の重さを知って欲しかった。
逃げずにいてくれたなら、トラックを止めてさえいてくれたら、彼は…助からなかったとしても…
丁寧な字で一気に書き上げた。どうやって渡すとか、そんなこと何も考えず、ただただ伝えたかった。
お父さんは刑事裁判に向けて色々動いていた。裁判官に読んでもらえることになった。加害者へは届かず、読むことも無いそうだ。
裁判官へ渡すと聞いて、私は裁判官宛にも手紙を書いた。判例ではなく、しっかり罪を見極めてほしくて。
裁判の日が決まった。
裁判への参加はお父さんから止められた。裁判では色々傷つけられることもあるし、私のせいで彼が不利になることもあるそうだ。傍聴もしない方がいいと。お母さんも参加しないと言っていた。( 私が参加すると、今より尚、傷つき、息子が私を心配するからと参加させない方向にしていたと後で知った)
ブログで出会った方からアドバイスをいただき、腹を決めた。私はしっかり見届けたい!
その気持ちをご両親に伝えた。心配してくれるご両親に「私の方がお姉さんだから大丈夫!」と。
被害者参加制度はお父さんだけ。あとは傍聴するか、しないか。裁判当日までご両親から返事はもらえなかった。傍聴出来なくても、すぐそばに居たいと思い、当日ご両親のところへ行った。そして裁判所へ向かうギリギリの時間、お母さんがどこを見るでもなく「後ろで聞こうか」と言った。
胸が締め付けられるようだった。安堵と恐怖。
裁判では、私はやっぱり泣いてしまった。泣きっぱなしだった。
開廷するまでの恐怖の様な感覚
初めて見る加害者
彼への想い・・・
事故の様子は想像以上だった。彼が可哀想で可哀想でたまらなかった。彼は哀れまれることが嫌いだった。だから、可哀想とは今まで思った事がない。しかし、この時ばかりはその感情を抑えられなかった。
彼はその時までしっかり生きてた。トラックが向かってきて、彼はトラックに気づき、引き返そうとした。自分を守ろうと、生きようとしたんだ!
それなのに…轢き殺した。弾いてから、なお殺したんだ。止まらずに、自分の保身のために彼を巻き込み逃げた。
これは現実の話だ。