閉廷
裁判を傍聴するなんて夢にも思わなかった。
私はその一日だったが、お父さんは、そのために何度も検事さんや弁護士さんと会ったのだろう。
検事さんも弁護士さんも、いい人だった。良かった。
判決はもちろん、納得いくものではない。当たり前だ。彼は帰って来れないのだから…
閉廷して、すぐに外へ出た。加害者、加害者の息子、加害者の会社の人達、同じ空気の中に一秒たりともいたくなかった。顔も見たくない、気配も感じたくなかった。
加害者側の席の方から聞こえる笑い声を耳にしながら、部屋を出た 。裁判中も、ことごとくクズだった。加害者本人、30歳くらいの息子、運送会社の社長、加害者の弁護士。全員、呆れる。彼の想いなんて、まるで分かっていない。反省の意味すら理解出来ていない。それでも私は、憎しみをあまり感じない。その感情を通り越しているのか?わからない。
しかし、許さない。
彼を、彼の命を返してくれるなら、全て帳消し、帳消しどころではない、加害者の願いを何でも叶えてあげよう。私は何も要らないのだから。
でも、無理なんだよね。
帰り道「やっぱり裁判を傍聴して良かった」とご両親に言った。辛かったけど、良かった。と。
お父さんもお母さんも「raiseが、良かったなら、良かった」と言ってくれた。
それでも、何も変わらない現実。帰り道、時間を埋めるためにしている会話。それぞれの心が潰れないように…少しだけ、支えあって…